毒とジュエリー時々整体

日々のつぶやき

茶色いお弁当



母の作るお弁当は

いつも"茶色"だった。

基本的に火の通っていないものは

入れないという主義だった。

私はそれを特に不満に思ったことはないが

クラスでかわいいかまぼこが流行った時

どうしてもそれを入れて欲しくて

買い物について行った時に

ねだってねだって粘り勝ちして買ってもらった。


次の日、私はそのかわいいかまぼこを

とても楽しみにお弁当の蓋を開けた。


Σ('◉⌓◉’)



そこには

たしかに昨日買ってもらったかまぼこはあった。

切り口がお花になっているかわいいかまぼこ…


しかし、それは

母の"愛"により茶色く煮しめられていた。

鮮やかなピンクや黄色の着色は

それとはわからないほどくすんでいた。


家に帰ると早速母に文句を言った。

なんでそのまま入れてくれなかったのか。

煮てしまったら綺麗な色が台無しじゃないか!


文句タラタラの私に

母は一言

「だって火を入れないと傷むじゃないの」


クラスメイトは皆そのまま入れて来ていた。

痛んでいたなんて話は聞いたことがなかった。

母の配慮など当時の私には分からなかった。

それでも、どうやら母には生ものは入れない

という確固たる信念があるらしいと

子供心に悟り、以来かわいいお弁当は諦めた。


が、母よ貴女は正しかった。

お弁当にかまぼこやちくわをそのまま入れるのは

食中毒の危険性があるのだという。


そして、成人し自分でお弁当を作るようになると

私もまた茶色いお弁当を作るようになった。

何にでも必ず火を通す。

傷まないよう工夫すると、どうしても

鮮やかな色は諦めるしかない。

あの頃母は何を入れてくれていたっけ?

そんなことを振り返りながら

母のお弁当を真似て今日も作る。

とってもめんどくさいし

何を入れようかと日々悩ましい。

正直お弁当作りは好きじゃない。

それでも作るんだから

やっぱりお弁当って"愛"だなぁ。