毒とジュエリー時々整体

日々のつぶやき

金比羅さん


仲良しの後輩が金比羅さんへ初詣に行くというので、私の代わりに御神籤を引いて、中に入っている金の狗守り(豆粒みたいに小さなマスコット)を持って帰ってくれるようにお願いした。


私は人にあまり甘えられない性格で、こんなちょっとしたことでもお願い出来ないのだが、今回はあちらから何かお土産に欲しいものはないかと訊いてくれたので、思い切ってお願いした。

(百円の物を思い切らないと言い出せないなんて我ながら遠慮しすぎだとは思うが、性分なので仕方ない)


金比羅さんは、昔から行けない時は犬に代わりに行って来させたという伝統がある。

だから、御神籤についてくるお狗さんは、私の代わりに金比羅詣りをしてくれたことになるだろう。

と、思ったからというのもあったけれど、もう一つ、ちょっと不思議な思い出があって…


何年か前のこと

床にこの金のお狗守りが落ちているのを母が見つけた。

誰の?と訊いても誰も知らないという。


実は私、こういう小さな金のマスコットが好きで、七福神とか縁起物とかのついてくる御神籤を見つけると、中身目当てで引いていた。

だから、持ち主がいないなら私が貰おうと密かに思っていた。


ところが、父が財布に入れる、と言うではないか。

先に言ったもん勝ちである。


それからしばらく金の狗はテーブルに置かれたままになっていた。

吹けば飛ぶような小さな物なので、こんな所に置きっぱなしにしていたらまたどこかへ飛んで行くかもしれない、そう思って本棚の所に置いておいた。

もしこのまま父が忘れてしまうなら私が頂こうと思っていた。

しかし父はしっかり覚えており、

「あれ、狗はどこいった?」

と探し回るではないか。

仕方ないので本棚の所に置いたことを教えると

財布に入れて満足そうにしている。

父の意外な面をみたような気がした。


狗の本当の持ち主は、多分その場にいなかった弟だったのだろうと今振り返ってみるにそう思う。

弟は旅行が好きで日本中あちこち行っており、おそらく金比羅さんも行って御神籤を引いたのだろう。

中に入っていた狗守りはそのままポケットにでも突っ込んで忘れ、何かの拍子に家の中で落としてそれを母が見つけた。

多分それが真相なんじゃないだろうか。

どこかからふっと現れたなら不思議現象だが、そんなわけはないだろう。

一見不思議そうなことでもよくよく紐解けば案外正体は単純なことだったりする。


それでも、その一件で私の中に金の狗は強く印象に残っていたので、今回後輩が持って帰ってきてくれた事がただただ嬉しくて有り難い。