5月の風
五月の風をゼリーにして持ってきてください
ひじょうに美しくておいしく
口の中に入れると
すっととけてしまう
青い星のようなものが食べたいのです
立原道造
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毎年、5月になると
詩人立原道造の
この美しい言葉を思い出す。
道造は3月に亡くなるのだが、
見舞いに来た知人に、
何か欲しいものはあるか?
と訊かれた際に答えたのがこれ。
実際には
"5月の風"と"5月のそよ風"と
2つの説があるのだけれど
どちらにしても
なんて詩的な表現だろう。
詩の一節と勘違いしてる人もいるくらいだ。
それにしても、
5月の風を閉じ込めたゼリーとは
一体どのようなものだろうか?
しかも、青い星のようなもの
それでいて非常に美味しく
見た目も美しいもの。
こんなものを苦しい息の下で所望されたら
今際の際に口に含ませてあげたいと
思うに決まっている。
キラキラと青く輝くゼリー
口の中でスッとはかなく溶けて
5月の風を思わせる匂いが立ち上り
その上とびきりおいしい…
毎年5月になると
道造の枕元へ運ぶゼリーを
私は想像する。
そして若くしてこの世を去った
美貌の詩人に想いを馳せる。
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