毒とジュエリー時々整体

日々のつぶやき

小川のほとりにて



いつも、ではなく

ほんの時たま通る道がある。


その道なりには

小さな東屋があり

ちょうど街路樹の木陰に建てられている。

すぐ横には小川が流れていて

暑い日などは涼しく気持ちよさそうで

つい寄ってしばし腰掛けてみたくなる。


が、しかし、その東屋の入り口には

私が通りかかる時はいつも

自転車がピタリと横付けされていて

立ち入ってはいけない空気があった。


ある時のこと、

その日は珍しく自転車が

置いていなかった。

それで好奇心から東屋に立ち寄ってみた。


中に入ると、壁面に埋め込まれた木の腰掛けに

小さな猫が一匹、静かに眠っていた。

私が近寄っても目を開けるでもなく

ただひたすら寝ていた。

そして時折、ケホンケホンと

力なく咳をした。


病気なのだろうか?


木の腰掛けの下には餌入れと水入れと

ペットボトルとネコ缶が置いてあった。


どうやら誰かがここで猫をお世話しているらしい。


それからは通りかかる度

あの猫はどうしているだろうか?

と、その姿を確認するようになった。

大抵の場合は入り口にまるで門のように

自転車が横付けされていた。


猫は時には小川の前に座っていることもあった。

何を思っているのか?

じっと水が流れる様を眺めていた。

痩せこけて毛はボサボサとしており

その後ろ姿は、長く床に臥していた病人が

"今日は気分が良いから"と縁側に座って

外を眺める(映画やドラマでお馴染みの)姿を

思い起こさせた。


それからしばらくして

いつ通っても自転車を見かけなくなった。

猫はどうしているだろう?

と東屋を覗くと、腰掛けの下にあった

お皿やボトルがなくなっており

猫も姿を消していた。