毒とジュエリー時々整体

日々のつぶやき

夢二の指輪


かなり朧な記憶で


いつ、誰と、なぜ、どうやって、行ったのか


全く覚えていないのだが、


岡山にある竹久夢二の美術館へ行った時のこと。


そこには夢二の私物も展示してあり、


彼が死ぬまで身につけていたという


指輪も置いてあった。


それはなんだか遠目からでもわかるような


独特の空気を纏っていた。


指輪の前まで行って眺めてみると


まるで命が宿っているかのような


生々しさがあった。


内側には若くして亡くした恋人の名前と年齢


自分の名前と恋人を亡くした時の年齢が


刻印されていた。


それはひっそりとした秘密のようだった。


プラチナ製との事だが、夢二の生きた時代からして、

この頃は宝飾品は金が主流で、プラチナは主に軍需用、

宝飾としては使われ始めたばかり、といったところのはず。

ホワイトゴールド製の可能性が高いのではと思うけど、

まさかそんなの展示するからには間違えないだろうし…

本当にプラチナ製だったとしたら

夢二は流行に敏感な人だったのだなと思う。

もちろん、内側に刻印をする場合、金より

プラチナの方が向いていたからという理由も

充分考えられる。


昔は土葬だったのだし、身につけたまま

埋葬してあげたら良かったのに

なぜ指から抜き取り、このような場所で

人目に晒しているのだろう?

百歩譲って遺族が形見として残したとしても

これは遺品にするより夢二と共に

葬られるべき品のように思った。


私はその指輪の前から動けなくなって

ずっと見ていた。