毒とジュエリー時々整体

日々のつぶやき

デューク



ネタバレ含みます。


知りたくない方は

ここでさよならでお願いします。



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もう随分昔のことになるけれど

江國香織さんの短編集を読んだ。

(確か、どこかで休憩した時に

そこに置いてあったんじゃなかったかな?)




本の中に収められていた

"デューク"というお話は

当時、ペットロスだった私の心に

非常に深く沁みてきた。


話は主人公が愛犬デュークを亡くして

びょうびょうと泣いている所から始まる。


この"びょうびょう"という泣き方

なんだか突飛な表現だと思いきや

実は江戸時代には犬の鳴き声とされていた。

つまり、これから犬(亡き飼い犬)が

話に関わってくるよ、ということが

隠しヒントになっているわけだ。


わんわん泣く、と書いてしまうと

わんわん=人が泣く、犬が鳴く


で、簡単に推察出来てしまうから

びょうびょう=江戸時代の犬の鳴き声


と、分かる人には分かるよう

言葉遊びで伏線を張っているのは

作者のちゃめっけだろう。


主人公が人目も憚らず泣いていると

そこに不思議な男の子が現れて

2人はひょんなことからデートをする。


1日楽しく過ごし、別れ際になった時

男の子は主人公にキスをして

ずっと愛してた、と言うのだ。

そのキスはデュークにそっくりだった。


物語はそこで終わる。


解釈は人それぞれだけど

デュークが男の子の姿を借りて

束の間主人公に会いにきた、と

私は思った。

いや、思いたかった。


なぜなら、このお話の大筋が

夢で見た内容にそっくりだったから。

私も夢で亡き愛犬と再会し

愛を伝え合いキスをした。

その感触をありありと覚えていた。


自分が見た夢がそっくりそのまま活字となり

目の前に出現しているとしか

思えなかった。

(もちろん、ペットを飼っていた人なら誰しも

別れの後は皆似たようなことを思ったり

夢に見たりするものだ)


読みながら涙が止まらなかった。

深い悲しみの底にいた気持ちが

癒されるようだった。


ちなみに、作者はちゃんと冒頭に

デュークはキスがうまかった

と書いているし、夜中に勝手に

テレビをつけて落語を観ていた

と、デュークが不思議な犬だったことも

さりげなく書いている。

つまり、人の姿を借りて束の間現れても

おかしくないと読者に思わせるのである。


このお話を手元に置いておきたくて

そのあとすぐに本を買った。


同じことを思う人は多いらしく

"デューク"は可愛らしい絵本にもなっている。




驚いたことに

最近では"デューク"は

国語の教材にも採用されている。

偶然ラジオで流れてきて

とても懐かしく聴き入ってしまった。