甘夏の思い出
甘夏を見つけて買った。
見た目が似てるはっさくは食べにくいけど
甘夏は適度に甘くて水気があって美味しい。
むくのが面倒だけど。
せっせとむいていたら
はるか昔の学生時代を思い出した。
ある時、部活の親睦会をしよう
ということになり放課後集まったことがある。
顧問の先生は、ほんの少し顔を出した後
自分がいると皆んな遠慮して楽しめないだろう
と言って部長にお小遣いを握らせると
すぐに帰って行った。
参加したメンバーのことは
ほとんど忘れてしまったけれど
私は一年で年下だったから
ひどく緊張していたことを覚えている。
先輩達に混じって机を動かしたり
椅子を運んだりしていると、
1人の先輩(3年生)が、
甘夏を持ってきたから
と言って、1人離れた席でむき始めた。
それは初めて見るむきかただった。
最初に皮の真ん中に爪で跡をつけ
そこから半分に割る。

実を取り出して
一房一房丁寧に皮をむいていく。
それを半分にした皮に収めるのだ。

私たちが会場を設営し
お茶や紙コップを並べている間も
先輩はせっせと1人甘夏に取り組み
ようやく完成させた。
どうだ!と得意げな先輩の手は
甘夏の汁で濡れてピカピカしていた。
この先輩というのが
顔はそこまで美人ではないのだけれど
髪が長く、近くに行くとふわりと
良い香りがして、優しい喋り方をした。

なんだか漫画から飛び出してきた人みたい
といつも思っていたものだ。
特に先輩と親しくなることもなければ
部活でもほとんど接点もなかった。
それに3年生は夏休み前には引退なので
思い出はこの親睦会の時のみ。
それなのに、甘夏をむくとき
私はなぜかいつも思い出すのだ。
綺麗に盛り付けられた甘夏のことや
それを1人離れた席で一生懸命に
むいていた先輩の姿や
美味しい!って食べてた別の先輩の顔や
顧問の先生のことまで。
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